TCFD提言に基づく情報開示

当社は法人のお客さまや自治体向けの自動車リース事業を主軸に、お客さまの移動をシームレスにするモビリティサービスを提供しています。自動車産業の脱炭素への移行を支援する立場から、気候変動の影響に注目し、将来を見据えたEVリース事業を強化しています。

ガバナンス

サステナビリティ推進部担当役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会では当社のサステナビリティへの取り組みを検討し、経営会議へ報告する体制を有しています。気候変動などのサステナビリティ経営全般における重要事項は経営会議で審議され、取締役会に報告されます。経営会議は社長をはじめとする執行役員で構成されています。

リスク管理

当社では気候変動をはじめとするサステナビリティ全般のリスクと機会を予め識別、評価し、サステナビリティ推進委員会で重要リスクを特定しています。重要リスクについては経営会議で審議を行い、取締役会に報告することとなっています。重要課題の進捗状況については、サステナビリティ推進委員会および経営会議を通じて適切に管理してまいります。

戦略

不確実な将来を見据えたサステナビリティ経営を実現するためには、2℃以下を含む複数のシナリオで分析を行い、気候戦略を立てる必要があります。1.5℃と4℃のいずれのシナリオにおいても気候変動リスクはかなり限定的で、影響が少ないと評価しています。
一方、1.5℃シナリオの中長期視点から評価したとき、気候変動は当社にとって大きなビジネス機会になることと考えているため、脱炭素に向けたEVリースの普及拡大に向けた戦略を強化しています。

シナリオ 重要課題 分類 当社影響
短期 中長期
1.5℃シナリオ 気候変動
(カーボンニュートラル)
リスク
機会
資源循環
(サーキュラーエコノミー)
リスク
機会
4℃シナリオ 自然災害 リスク
機会
自然環境・生物多様性 リスク
機会

気候変動と生物多様性は密接な関係にあることから、TCFDで推奨している気候変動や資源循環、自然災害以外に、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)で要求される自然環境や生物多様性も含めてシナリオ分析を行っています。

時間軸

気候変動のシナリオ分析においては、単年度を短期、2024年~2030年(SDGs対象期間)を中期、2031年~2050年(カーボンニュートラルのゴール年)を長期と定義しています。

採用したシナリオ

1.5℃シナリオでは、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)が発行したWorld Energy Outlook (WEO)2021のNZEシナリオ)を採用しています。4℃シナリオでは、国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の報告書のRCP8.5 シナリオを採用しています。

Net Zero Emissions by 2050の略:2050年ネットゼロ達成、2100年の温度上昇1.5

シナリオ分析によるリスクと機会

気候変動(カーボンニュートラル)

リスク
当社は、石炭火力のような座礁資産になりうるものは保有しておらず、工場も所有していません。環境負荷を極力抑えた形で事業活動を展開しているため、脱炭素社会への移行に伴うリスクは小さいと認識しています。商品であるリース車両に関しても、強い制限が課される状況にはないことから、気候変動の観点から当社への影響は小さく、将来においても影響を及ぼす可能性は低いと考えています。
機会
将来的には新車販売だけではなく、自動車リースについてもEVへのシフトが進む見込みです。当社ではEVリースをビジネスの競争軸として考え、次世代車両の仕入台数に占める割合を中長期的に高める計画を掲げており、EVリースを積極的に推進する方針です。EVに特化した専門部署を設置し、お客さまや地域への導入支援を行っていますが、単なるEVリースだけではなく、充電環境、車両管理・メンテナンスを含めた複合的な提案を行い、普及促進を加速化させています。EVリースのニーズが今後さらに強まることが予想されるため、将来的には当社ビジネスへの貢献の可能性も広がると想定しています。

資源循環(サーキュラーエコノミー)

リスク
当社は整備工場などを所有していないため、廃棄物はオフィスから排出される一般廃棄物がメインになります。また、商品であるリース満了車両については、中古市場で売却しているため、車両商品関連の廃棄物を直接的に排出する機会はかなり限定的と考えています。資源・廃棄物の観点から、当社への影響は小さく、将来においても影響を及ぼす可能性は低いと考えています。
機会
当社では、リース期間が満了した車両が再リースとして継続利用されなかった場合、入札会などの中古市場等で売却および処分しています。これらの活動は資源の循環的な利用と、車両の使用寿命の延伸に貢献しています。また、車両修理等においてはリビルト部品などのグリーンパーツを使用しており、資源を有効的に活用しています。資源枯渇や、世界的な人口の増加の背景から、サーキュラーエコノミーへの対応ニーズが今後さらに強まることが予想されるため、将来的には当社ビジネスへの貢献の可能性も広がると想定しています。

自然災害

リスク
特定の自然災害が当社の与信先や事業拠点に損害を与える可能性はあるものの、地域が分散されていることなどから影響は限定的と考えています。自然災害の観点から、当社への影響は小さく、将来においても影響を及ぼす可能性は低いと考えています。
機会
自動車リース業界では、損害保険業界などと比較して自然災害との関連性が低いです。当社では、大雨・洪水・台風・高潮・地震による津波などの水害で、概ね車両の床下(フロア)浸水程度の被害を受けた既存取引先の車両に対し、車両使用の可否について臨時の簡易点検を行う車両災害サポートプログラムを提供しています。また、地方自治体とEVの導入および再生可能エネルギーの調達、災害対策に向けた連携協定などの締結により、連携企業とともに活動を推進していますが、自然災害分野での当社ビジネスへの貢献が小さく、将来においても影響範囲が限られると想定しています。

自然環境・生物多様性

リスク
当社は、製造業などと比較して自然環境・生物多様性などとの関連性が低いため、自然環境・生物多様性の観点から当社への影響は小さく、将来においても影響を及ぼす可能性は低いです。
機会
当社は、製造業などと比較して自然環境・生物多様性などとの関連性が低いため、自然環境・生物多様性の観点から当社ビジネスへの貢献は小さく、将来においても貢献範囲が限られると想定しています。

表は株式会社日本格付研究所(JCR)が発行するESGクレジットアウトルックの評価内容をもとに当社で作成

脱炭素への施策(Scope1,2,3)

当社では、2050カーボンニュートラルの実現に向け、Scope1,2,3の3つのスコープに分けて脱炭素の施策を進めています。

Scope1: 社用車の台数の最適化とEV化の推進

Scope1は、社用車の使用に伴う直接的排出量を対象としています。
経営理念に掲げている「クルマ社会の発展と地球環境の向上に貢献する」ことを実践し、率先して脱炭素社会の実現するため、社用車のEV切替を加速させ、2024年までに50%のEV化、2030年度までに全車両完全EV化を目指します。
当社は、営業活動で計221台の社用車を利用していましたが、「車両最適化サービス」(自社提供)を活用し、2022年度までに約3割の社用車を削減しました。最適化で捻出した費用を活用し、社用車のEV化を促進しています。

Scope2: 再生可能エネルギー由来の電力へ切り替え

Scope2は、事業所における電力や熱の使用に伴う間接的排出量を対象としています。
当社の事業所は本社も含めすべてテナントビルに入居しているため、使用電力を再生可能エネルギー由来に切り替えるのは難しい面もありますが、一つでも多くの事業所で再生可能エネルギー由来の電力を利用できるよう、テナントビルに働きかけています。大阪本社においては、すでに全電力を再生可能エネルギー由来の電力に切り替えています。

Scope3: お客さまや自治体のEV導入、普及拡大に向けた活動支援

EVに特化した専門部署を設置し、お客さまや自治体向けのEV導入を促進

Scope3は、カテゴリー1,2,3,5,6,7,13の間接的排出量を対象としています。
特に、カテゴリー13の「「リース資産(下流)の使用」に伴うGHG排出量はサプライチェーン全体の6割以上を占めているため、脱炭素社会を目指すためには、お客さまや自治体のEVの普及拡大に向けた活動支援が必要不可欠です。
当社は、EVと融合した「モビリティプラットフォーマー」への進化を目指し、法人のお客さまや自治体のEV導入を支援するために、「EV&カーボンニュートラル戦略推進部」と「モビリティ&EV企画部」を設置しています。
EV&カーボンニュートラル戦略推進部は、お客さまを担当する各営業部店と連携し、お客さまがEVを導入される際の導入計画や、使用目的に応じた車種選定、充電環境、充電サービス手配、アフターサービス、および再エネ設備、エネルギーマネジメントなどの周辺サービスも含めたサポート(EVワンストップサービス)を行っています。また、EVの特性を活かした、リユース、リサイクルなど長期的な利活用につながる新たなサービスも検討しています。
モビリティ&EV企画部は、テクノロジー進化、ビジネスマクロ環境の変化へ迅速に対応するため、モビリティやEV関連の企画およびプロジェクトに取り組んでいます。

お客さまの車両台数最適化およびEVの導入促進

当社は自動車リースを主業としていますが、レンタカーやカーシェアなども組み合わせた車両台数最適化サービスも提供しています。2022年度までにすでに100社以上のお客さまの車両稼働状況を分析し、最適化提案を行っています。稼働率の低い車両を減らし、削減できたコストを原資にEV導入を促進することで、気候変動への対応スピードを加速させ、脱炭素社会の実現に貢献しています。

サーキュラーエコノミー(Circular Economy)への取り組み

当社は自動車メーカーやディーラーからクルマを調達し、法人のお客さまや自治体にリース商品として提供するだけでなく、クルマを安心・安全にご利用いただくためのモビリティサービスを提供しています。このような事業特性により、当社のサーキュラーエコノミー活動は、持続可能な調達およびお客さまの持続可能な利用に向けたサポートに重点を置いています。

サーキュラーエコノミーへの取り組み内容

持続可能な調達

クルマと部品は需要に応じた調達と供給体制を構築しているため、実質的なロスはゼロです。クルマ提供の際は、お客さまに良い商品を長く使っていただくために、メーカー保証付きで高品質の脱炭素、低炭素のクルマを積極的に調達しています。

持続可能な利用に向けたサポート

当社は自動車リースを主業としていますが、レンタカーやカーシェアなども組み合わせた車両台数最適化サービスを提供しています。稼働率の低い車両を減らし、削減できたコストを原資としてEV導入の提案を行っています。お客さまの車両を良好な状態に保つために、メンテナンスサービスを含む車両管理サービスを提供し、車両の使用可能年数の延長に貢献しています。部品交換時にはリビルド部品などのグリーンパーツを積極的に活用、タイヤ交換時には低燃費(エコ)タイヤや、地域によってはオールシーズンタイヤなどのエコデザインパーツを活用することで、省資源化やCO2排出量の削減に貢献しています。

リース満了車両を中古車として再利用

当社では毎年7万台以上のリース車両が満了を迎え、多くは良質な中古車として売却していますが、昨今は自社の中古車リースやレンタカーへの再利用も推進しています。2018年から中古EVの新たな二次利用を促進する「EVカスケードリユースプロジェクト」を日産自動車株式会社、住友商事株式会社と共同で取り組み、現在はこれらの知見をベースに、当社として取り組みを加速させています。

オートリサイクル事業の展開

使用済み車両のリユース・リサイクル市場での売却を数多く扱ってきたノウハウを活かし、損保会社、リース・レンタカー会社等から委託を受けた全損車両の処分を仲介するオートリサイクル事業を展開しています。

適切な処分に向けた管理

車両廃棄処分する際にはマニフェスト管理や解体業者の資格有無など、法令に則り適正に処理が行われるよう、管理しています。

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