責任者インタビュー

Interview

EV責任者インタビュー

「EVと言えばSMAS」と呼ばれるような
リーディングカンパニーに導く

営業戦略本部 副本部長
兒玉 龍治

グローバルなEV動向と国内の現状

2025年4月に上海モーターショー視察の機会があり、中国のEV化の現実を目の当たりにしました。価格や装備、航続距離、さらにはデザインも日本を凌いでいる。上海中心部を走っているのはほぼEV。中国では、EVはもはや「当たり前」になってきているのです。対して今の日本はどうでしょうか?充電インフラの整備など解決すべき課題が多く、世界に比べてEV化のスピードは遅いと言えます。もちろん、世界に目を向けると米国関税政策の影響もありそのスピードは落ちましたが、それでも、電動化の流れが止まることはなく、抗うことはできません。我々が目指しているEVへの方向性と取り組みは決して間違っていませんし、困難であっても歩みを進め、業界をリードしていくことが重要だと考えています。

実証フェーズから実装フェーズへ移行

昨年度は、EV&カーボンニュートラル戦略を推進すべく、全国7都道府県で「SMAS e-PARK」を開催し、自治体とのビジネスも拡大しました。今後は、お客さまにEVを見て触っていただく実証フェーズから実装フェーズへとギアを上げていきます。これまで当社では、「EVを採用いただく」ことに主眼を置き、EVをいわば"点"として捉える傾向にありました。今後は、カーボンニュートラルをめざす手段の1つとして捉え、自社の取り組みも含めて"線"でつないでいかねばならないと考えています。

クルマ社会の発展と地球環境の向上に貢献する

我々が目指すのは単にEVを普及させることではありません。前述のとおりあくまでEVは手段であり、その本質は当社の経営理念である「クルマ社会の発展と地球環境の向上に貢献」することです。モビリティにおけるお客さまの経営課題を解決し、社会貢献へと繋げていく――この精神を我々一人ひとりが持ち、最適な仕組みをお客さまに訴求していくことが重要です。

EVと言えばSMAS

私も日頃、営業現場でお客さまから「EVはまだ早い」「様子をみてから」というご意見をよく伺いました。一方で、「環境対策には興味がない」という話は聞いたことがありません。つまり、「EVには興味はあるが、何から手を付けたらいいかわからない」というのがお客さまの本音ではないでしょうか。
完璧な正解はありませんが、お客さまの実情を知り、"リース"に拘ることなく経営課題をひとつひとつ解決に導いていく。時には、お客さまのニーズに最適なものを「一気呵成」というより「部分最適」で取り入れていくことも必要でしょう。そのため2025年度に、「気候変動リテラシーの向上」と「脱炭素社会への貢献」を目的とした新たな研修・人財育成プログラム「SMAS Green Lab.」も立ち上げました。社員のリテラシーを高め、単なる"営業"から"コンサルティング"への脱却を図っています。そのうえで、EV導入の障害を乗り越える道をこれからも社内外の協力を得て模索していきます。「EVと言えばSMAS」と呼ばれるようなリーディングカンパニーとなる日はそう遠くないと信じています。

EV戦略

SMASを取り巻く外部環境

政府は2030年までにEV普及に不可欠な充電インフラを30万口設置、2035年までに乗用車新車販売の電動車比率100%の目標を掲げ、種々の補助金スキームを構築しています。
足元においては、EVシフトの失速を示すような動きが見えていますが、EV化は気候変動問題の緩和策であり、充電環境が整備されるとともに、日系自動車メーカーのEVモデルラインナップが拡充されれば、EV化も加速すると見込んでいます。
※EV、FCV、PHEV、HEV

SMASの現状と課題

当社グループは保有管理台数約102万台、約4万5千社の顧客に対し、主業として自動車リースを提供していますが、レンタカーやカーシェアなども組み合わせた車両台数最適化サービスも提供しています。2023年度までにすでに110社以上のお客さまの車両稼働状況を分析し、最適化提案を行っています。稼働率の低い車両を減らし、削減できたコストを原資にEV導入を促進することで、気候変動への対応スピードを加速させ、脱炭素社会の実現に貢献しています。
当社は、全国約2万社のメンテナンス工場と提携をしており、EV対応を進めています。充電環境のみならず、メンテナンスサービスも拡充させ、お客さまが安心してEVを利用できるようにしています。また、リユースEVの実証実験を実施しており、脱炭素化を推進する自治体向けにリユースEV活用の有効性およびリユースEV活用を支える仕組み、サポートのあり方を検討しています。
サステナブルな社会の実現に向けて、新車EVに加え、リユースEVの可能性追求も重要なテーマととらえています。

推進体制

当社は、EVと融合した「モビリティプラットフォーマー」への進化を目指し、法人のお客さまや自治体のEV導入を支援するために、「EV&カーボンニュートラル戦略推進部」を設置しています。
EV&カーボンニュートラル戦略推進部は、お客さまを担当する各営業部店と連携し、お客さまのEV導入から運用までの一貫したワンストップサービスの企画・立案、各自動車メーカーと連携したEV車のプロモーションなどを行っています。
また、EVの特性を活かした、リユース、リサイクルなど長期的な利活用につながる新たなサービスも検討しています。

ステークホルダーとの協創

当社は、住友商事株式会社、三井住友フィナンシャルグループおよび三井住友ファイナンス&リース株式会社とともに、カーボンニュートラル推進を起点としたEV事業スキーム、ならびにEVとEV周辺事業との連携に向けた協業を推進しています。さらに、2023年には欧米のフリートマネジメント会社Arval・Elementと3社間の戦略的アライアンス契約を締結しました。本提携は、 ArvalおよびElementという創設パートナーに加えて、当社を含めた提携会社9社によって構成され、世界5大陸の56か国で事業を展開しています。今後、さらなるグローバルネットワークの強化に向け、連携を進めてまいります。

気候変動リテラシー向上と脱炭素社会への貢献に向けた人財育成プログラム「SMAS Green Lab.」

当社はこのたび、「気候変動リテラシーの向上」と「脱炭素社会への貢献」を目的とした新たな研修・人財育成プログラム「SMAS Green Lab.(エスマス グリーンラボ)」を始動しました。この取り組みは、社員一人ひとりが気候変動に関する基本的な理解を深め、環境意識を基盤とした営業提案力を強化することを目指すものです。営業部門を起点に、全社への展開を計画しており、継続的かつ実効性のある仕組みとして構築していく方針です。

営業戦略本部 EV&カーボンニュートラル戦略推進部 兼 サステナビリティ推進部
森本 貴子、佐藤 佑香

背景にある課題認識

当社にとって、気候変動や脱炭素化に対する取り組みは、社会的責任にとどまらず、今後の事業成長に不可欠な視点であると認識しています。企業としての持続可能性を高めるためには、社員が「なぜ今、脱炭素を目指すべきなのか」を理解し、自らの業務と環境課題との関わりを自覚することが重要です。そのため、私たちは教育・研修体制の整備を通じて、社員の環境リテラシーを高める基盤づくりに取り組んでいます。

「SMAS Green Lab.」の概要と狙い

SMAS Green Lab.は、以下の3つを主な目的とした研修・人財育成プログラムです。

1. 気候変動対応・脱炭素化に関する基本知識の習得

気候変動のメカニズム、パリ協定などの国際的な枠組み、脱炭素に関わる政策や制度、EVなどについて、体系的に学ぶことを支援します。
2. 脱炭素化起点での顧客提案力の向上
当社が提供するEV、モビリティサービス、RMS(リスクマネジメントソリューション)、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など、多様なサービスを脱炭素の視点から最適に組み合わせ、顧客価値の最大化を図る提案力を育成します。
このプログラムは、単なる知識の習得にとどまらず、「気候変動という地球規模の課題を、自社のビジネスにどう結びつけていくか」という実践的な視点を重視した設計となっています。
3. 環境省認定「脱炭素アドバイザー」資格取得支援
人財育成の具体的な施策の一環として、当社では環境省が認定する「脱炭素アドバイザー」資格の取得を積極的に推進しています。これは、社員が第三者機関によって認定される専門的な知識と実践力を有していることの証明となり、今後の顧客提案活動や企業間連携において、信頼性の高い人財としての役割を担うための重要なステップです。
資格取得にあたっては、社内での学習支援体制の整備や受験費用の補助、取得後の実務活用支援など、継続的なバックアップ体制を構築していきます。

今後の展望

SMAS Green Lab.は、営業部門のみならず、本社部門・サービス部門など全社への展開を視野に入れたプログラムです。今後は、部門横断的な取り組みとして、全社での気候変動リテラシーの底上げを図ります。これにより、社員一人ひとりが「持続可能性」を自身の業務に内包した考え方を持ち、全社としての環境対応力を高めていくことを目指します。

財務責任者インタビュー

新たなクルマ社会の実現に向けて 強固な財務基盤で持続的成長を支える

常務執行役員 本社部門担当役員(経理部・財務部)
橘 淳

財務リスクを軽減する安全性重視の資金調達体制

サステナビリティ経営において財務部門の果たすべき役割は、資金の流れを維持し、持続的な成長と安定的な経営を支える強固な基盤を構築することです。その中心にあるのが、安全性を重視した資金調達です。当社は、金利変動リスクを軽減し、堅実な資金確保につながる長期固定金利による資金調達を主に行ってきました。日本銀行(日銀)が金融政策の正常化を進める中、市場金利はハイペースで上昇してきましたが、当社の資金調達コストは緩やかな上昇にとどまっており、影響をコントロールできています。
日銀は今後も政策金利の引き上げを続ける方針ですが、一方で米国の関税政策により世界経済の先行きの不透明感が強まっており、市場のボラティリティが高まっています。このような状況においては、営業資産(主に自動車リース)の満期到来状況に合わせて借入期間などを設定するALM(Asset Liability Management:資産・負債総合管理)を徹底することが重要と考えています。当社は、「事業領域の拡大」という大方針のもとでグループ会社を通じたビジネスが拡大していますが、グループ全体の営業資産状況を踏まえた資金調達を当社が行い、各社にグループファイナンスを行うことで連結ベースのALMを実現し、リスクをモニタリングしています。
加えて、十分な金額の当座貸越契約やコミットメントライン契約、全国約70行に分散された取引金融機関、返済・借り換えのタイミングの分散といった対応により流動性リスクを最小化しています。また、取引金融機関との良好で安定的な関係構築も重視しており、定期的なコミュニケーションのみならず、協働によるオートリースビジネスの拡大などの営業分野も含めた重層的な関係を構築している取引先もあります。このように、多くの金融機関から積極的な支援を得られる関係を構築している点も当社の財務リスクを軽減につながる強みであると認識しています。

多様なステークホルダーと一体となり、新たなクルマ社会の実現を目指す

当社は資金調達手段の多様化を図るため、2018年から自動車リース業界初となる公募社債を発行しています。社債について投資家にご案内した際に、「当社の環境配慮型車両普及促進の取り組みが国際的なグリーン適格基準にも適合する」とご評価いただいたことをきっかけに社内で検討を進め、2020年にグリーンボンドの発行に至りました。さらに、高度な交通事故削減サポートなどの実現に向けてパートナー企業と共同開発したモビリティサービス「SMAS-Smart Connect」が社会貢献につながるサービスであることから、2021年にはそれに用いる車載器の購入を使途に加えたサステナビリティボンドを発行しました。
これらの資金調達手法は、より安全で環境にやさしいクルマ社会の実現に結びつくことはもちろん、投資家の皆さまにとっては債券投資による収益を享受しつつ、投資表明を通じて環境・社会への貢献を積極的に示すことにもつながります。当社としても、サステナビリティへの取り組みに賛同してくださる投資家から広く支援を募ることができるようになりました。2024年からはサステナビリティボンドのプログラムを一部の子会社にも拡大しており、グループ全体でのサステナビリティ推進を行っています。
SMASのサステナビリティ経営が目指すのは、自動車リース業界や自動車産業、さらには金融機関や投資家の皆さまと連携し、より社会に貢献できるように自動車ビジネスを進化させていくことです。今後も、財務面からEV推進や関連事業をバックアップし、新たなクルマ社会の実現を目指していきます。

財務戦略

SMASを取り巻く外部環境

気候変動をはじめとする多様な社会的課題の解決と持続可能な社会の実現に向けて、金融が果たす役割がますます重要視されています。金融機関や投資家が、企業の業績だけでなく、ESG(環境、社会、ガバナンス)の視点を考慮して投融資を行うことで、ESG課題解決のための資金の流れを生み出していくというサステナブルファイナンスが拡大してきています。このような動きをさらに加速させていくための取り組みが官民を挙げて行われています。サステナブルファイナンスの推進には、資金調達を行う企業の情報開示の充実が不可欠です。そのため、上場企業や公募社債発行企業に対しては、有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示が義務化されています。

SMASの現状と課題

当社は、2020年にグリーンボンドを発行しました。資金使途は、グリーン適格基準を満たすハイブリッド自動車、EVおよび燃料電池自動車の新規購入資金に限定しています。当社がこれらの環境性能の高い車をリース車両としてお客さまに提供することに加え、エコドライブの啓発、適切なメンテナンスの実施、低燃費タイヤの利用などを総合的かつ継続的に行うことにより、走行時のCO2排出量削減を支援しています。
2021年には、環境改善と社会貢献の双方を目的としたサステナビリティボンドを発行し、資金使途に、モビリティサービス「SMAS-Smart Connect」用の車載器購入資金を加えています。これらの車載器を使用した当社のサービスは、お客さまの安全運転を支援し、人とモノの移動に関する安心・安全な社会の実現に寄与しています。
当社はこれらESG債を継続的に発行していますが、毎回多くの投資家から投資表明(当社の取り組みに賛同し、社債を購入したことを公表すること)を得ています。
ESG債の発行には、第三者評価取得、資金使途確認、定期レポーティングなどの負 担が生じますが、当社の取り組みに対する投資家からの評価も高く、長期安定資金の 確保や当社経営への信頼を高めるなどの点でサステナビリティ経営推進に役立ててい ます。

今後に向けて

サステナブルファイナンス推進の動きは今後も続くと予想されます。開示基準や評価基準に関する国際的な動きは絶えず変化しており、新たなファイナンス手法も登場しています。最新の情報を常に把握し、適切な開示を行い、金融機関や投資家からの信頼に応えることが重要です。また、新しいファイナンス手法を研究し、活用可能なものは取り入れていきたいと考えています。
持続的な成長を達成するためには、金融市場が不安定なときでも揺るがない強固な財務基盤が必要です。これにより、投資を中断することなく、SDGsに向けた取り組みを続けていくことが可能になります。当社は、長期、固定金利での調達を中心とした安全性重視の資金調達を今後も続けていきます。さらに、調達ソースの多様化を進め、流動性枠を十分に確保し、返済・償還期日の分散を図ることで財務リスクの抑制に努め、サステナブルな事業拡大を支える基盤を強化していきます。

人財責任者インタビュー

挑戦する「個」が活躍できる人事改革でSMASの持続的成長につなげる

常務執行役員 本社部門担当役員(人事部・総務部)
渡部 慎一

新事業を担う人的資本の拡充でサステナビリティ経営を加速

オートリース業界のリーディングカンパニーとして成長を続けてきたSMASですが、モビリティ社会の到来や少子高齢化、DXなど社会環境の変化に合わせて、人事や組織のあり方も大きく変わるべき時を迎えています。SMASがこれからの時代を生き抜く上での最大のエンジンとなるのは「人」です。挑戦を恐れず、変化を歓迎する社内カルチャーを醸成し、時代に合ったスキルや資質を備えた多様な人財を育成することが、サステナビリティ経営における最重要課題の一つだと私は考えています。
今後のSMASはオートリース事業を基盤に、EVやモビリティサービス、自治体連携、グローバル展開などで事業を拡大していきます。そこに社員が高度なスキルと挑戦心を持って切り込んでいけるよう、ITリテラシーや専門スキル、語学やリーダーシップ力を高める研鑽の場を多く提供し、意欲ある社員を積極的に登用していく人財配置を進めていきたいと思っています。

「個」の活躍を生み出す人事制度を多角的に整備し、実効性を高める

私が現職に就いたのはコロナ禍にあった2020年4月。以来、急速なワークスタイルの変化に合わせて、既存のテレワーク制度の拡充に加え、スーパーフレックス、レンタルオフィス利用制度などフレキシブルな勤務形態を確立してきました。これらと並行して全社員を対象とした「働きがい実態調査」を実施し、人事制度への評価や社員のキャリア観、働き方や社内風土について、社員の声を直に吸い上げ、全社的なBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)など、合理的かつ新しい時代の働き方にふさわしい人事施策の改革にもつなげてきました。
2024年度からは新人事制度をスタートさせました。社員がより高いパフォーマンスを発揮できる環境をつくるために、年次や所属などに縛られず、経験やスキルに応じて新たなポストや待遇を得られる社員登用の仕組みを導入したものです。2024年度は総合職を対象としましたが、2025年度には事務職にも適用範囲を広げ、人財抜擢やプロフェッショナル化を進めたいと考えています。また、将来の経営幹部候補やグローバル人財の育成を視野に、全社目線を持ち、事業連携や経営志向を身につけることができる部門間ローテーションの活性化も図っていきます。
社員の自律的キャリア形成を支援する自己申告制度も導入しています。社員が自身のライフ&キャリアプランを上司や会社に申告し、希望や資質に沿った能力開発や配属に結びつける仕組みです。この制度の実効性をより高めていくためには、社内公募やOFF-JT研修など、既存の人事制度の運用も見直していく必要があります。社員が手を挙げやすい環境、研修内容を現場で実践できる機会を提供し、より社員一人ひとりのキャリア形成を重視した人財マネジメントを強化していきたいと考えています。
多様な人財が活躍できる組織にすべく、D&I推進も続けています。2024年度は外部から40名近いキャリア人財を採用しました。女性活躍推進においては、採用強化や女性管理職候補者の育成体制の充実を図り、女性管理職比率をさらに高める基盤が整いつつあります。
こうした「個」の活躍は、SMASの持続的成長に直結するとともに、クルマを取り囲むさまざまな社会課題に解決をもたらすサステナビリティ経営の実現にもつながっていくものです。その実現のために、私たち人事・総務もこれまでの枠組みに捉われることなく、社員それぞれの活躍の場を創出する改革と環境作りを実行していきたいと考えています。

人財戦略

SMASを取り巻く外部環境

現在、日本は出生率の低下と高齢者人口の増加により世界でも有数の"少子高齢化社会"となっており、これによる労働力人口の減少という課題に直面しています。また、デジタル技術の進展や脱炭素化に向けた環境問題への対応も急速に進んでおり、人財の一層の高度化・専門化も不可欠な状況になっています。
いつの時代も人財は企業にとって最も重要な資産ですが、持続的な企業活動のためには人財の確保と育成は従来にも増して重要なものと考えています。

SMASの現状と課題

当社は、多様な人財が個々人の強みを最大限に活かしながら働くことを目指した職場主導・社員主導の働き方改革「Workstyle Evolution Project」(通称:ワクエボ)、またハラスメントがなくすべての役職員が自分らしく働くことができる健全な職場を目指した「Good Workplace」活動を行っています。
また、取り巻く環境の変化や役割概念をふまえた「目指す姿」に向かって会社と社員の双方が継続的に成長するための仕組みとして、「成長し続ける組織と、挑戦し続ける人財を後押し」と「プロフェッショナル意識の醸成」の2つを基本コンセプトとした新人事制度を2024年4月から導入しました。
人権や人財育成に関する課題は、D&I尊重、女性活躍推進、ワーク・ライフ・バランス確保、長時間労働是正、ハラスメント撲滅、能力開発、公正・公平な評価など多岐にわたり、その進捗にはバラツキがあります。特に、サプライチェーン全体における人権デューデリジェンスは今後の大きな検討課題と考えております。

今後の推進に向けて

当社は、人権や人財育成に関する以下の基本方針を昨年新たに策定しました。

(人権基本方針)
私たちは、人権尊重の取り組みにあたって適用される各種法令を遵守するとともに「国際人権章典」および「国際労働機関」等の国際基準を尊重、支持します。また、「国連グローバル・コンパクト10原則」に賛同し「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて活動します。グループすべての役職員が人権尊重の責任を果たすよう努めるだけでなく、サプライヤーを始めとする取引先や事業パートナーに対し、本方針への賛同と理解、実践を求め、関与するバリューチェーンにおいて、ともに人権尊重を含む社会的責任を果たすよう働きかけていきます。

(人財育成基本方針)
私たちは、サステナビリティ経営で求められる人財像を打ち出し、企業の成長と社会の課題 解決に貢献できる人財の育成に注力します。

(社内環境整備基本方針)
私たちは、D&Iに則り、平等な機会と尊重の文化を通じて、公正で公平な社内環境を提供し、個々の成長と組織の繁栄を支えることに積極的に取り組みます。

(労働安全衛生基本方針)
私たちは、従業員一人ひとりの安全と健康を守るために、継続的に改善する仕組みを構築し、安全で快適な職場づくりを目指します。

昨年度策定した基本方針を社内で共有し、今まで行ってきたことを地道に継続することに加え、日々変化する環境に対して柔軟でスピード感ある対応を行うことを通じて、課題解決に向けた取り組みを着実に実行してまいります。

ガバナンス/コンプライアンス&リスク管理責任者対談

SMASの成長と持続可能性を支えるコーポレートガバナンス

小林 英生
常務執行役員 本社部門担当役員(法務部、審査部、債権管理部)兼 CRO 兼 CCO 兼 コンプライアンス・業務支援室長

阪本 正人
常務執行役員 本社部門担当役員(経営企画部、広報部、サステナビリティ推進部) 兼 経営企画部長

成長と持続可能性を両立するSMASのコーポレートガバナンス

(阪本)
コーポレートガバナンスのあるべき姿とは、企業の成長と持続可能性を両立させることだと私は考えています。そのために私が果たすべき役割は三つ。一つ目は事業環境の変化に機敏に対応すること、二つ目は社内全体にガバナンスを効かせる仕組みを強化すること、三つ目はステークホルダーとのコミュニケーションを活性化し、社外にSMASの価値や魅力を伝えていくことです。

(小林)
CCO(Chief Compliance Officer)とCRO(Chief Risk Officer)を兼務する私の役割は、俯瞰的な視点に立ち、健全な成長を阻害する要素を排除する管理体制を確立していくことだと考えています。コーポレートガバナンスの中でも、コンプライアンス遵守は企業価値向上に直結するもの。企業防衛だけでなく、社員の意識を向上させ、企業風土改善にもつながります。また、企業の持続可能性を考えると、リスク管理も重要なテーマです。事業上のリスクはもちろん、ESGに関連する多様なリスクも対応していく必要があります。

(阪本)
SMASの企業姿勢が問われる事案が生じたときには、全社的な視点から総合的に判断し、各部門で連携してスピーディに対応する体制づくりが不可欠です。CCO、CROはまさに俯瞰的な立場から組織全体に横串を通せる統率者だといえます。

企業価値向上へとつなげるコンプライアンス&リスク管理体制

(小林)
SMASのコンプライアンスは、法令のみならず社会規範や倫理、道徳も含まれ、広範囲にわたります。私の役割としては、違反や逸脱を未然に防ぐための監督・管理体制の強化が第一です。ただし、一方的に遵守を命じるだけでは組織の硬直化につながりかねません。自分たちが安心して働けて、お客さまや社会の評価につながると認識してもらうための教育や情報発信も大切だと考えています。
また、リスク管理では、リスクを適切に評価する目が必要だと考えています。リスクをすべて避けて通れば、事業活動そのものが萎縮するおそれが出てきます。例えば、投資にあたっては投資先のリスクを評価しなければなりませんが、事業の成長フェーズでは、あえてリスクをとるべき局面もあります。コンプライアンスとリスクの管理体制を成長のドライバーとして定着させたいと考えています。

(阪本)
コンプライアンスやリスクを「守る」「避ける」だけでなく、成長にどうつなげるかという視点を私たちは重視しています。SMASでは「コンプライアンスマニュアル」や「総合リスク管理規定」として明文化し、適切に対応していく枠組みを構築するとともに、「コンプライアンス・業務支援室」を創設しました。

(小林)
コンプライアンス・業務支援室では、社員がコンプライアンス遵守の重要性を理解し、適切な行動がとれるよう、定期的な教育・研修、所管部署のマネジメントを行っています。また、問題が発生したとき、影響を最小限に抑えて解決・改善につなげる仕組みとして、「事件・事故発生時の即一報」制度、「コンプライアンス・デスク」制度を導入しています。
「事件・事故発生時の即一報」制度では、経営に影響を与えかねない事案が生じたら、所管部署から直ちに法務部・経営企画部の担当に報告します。経営に影響を及ぼすと判断したら即座に取締役会へ報告し、そこでステークホルダーに影響が及ぶと判断されれば、株主に報告する制度です。

(阪本)
平時における取締役会や経営陣への定期的な報告と並び、不芳事案をいち早く吸い上げて迅速に対応できる体制を整えています。稀に各部署から「これは即一報に相当する事案でしょうか?」と問い合わせがくることがあります。そのときは、「その迷いが生じた時点で報告してください」とお答えしています。

(小林)
何より、報告が上がってくることが大切です。「コンプライアンス・デスク」制度では、ホットライン、指定弁護士、SCコンプライアンス事務局、SMFG総務部の4つの窓口を開いています。リスクは顕在化してから対応に回るのでは後手となりやすいものです。わずかな兆候の段階から、原因解明と改善に乗り出していくのが、私たちが目指すところです。

(阪本)
内部統制においても、業務規則を仔細に定めています。社員も最初は大変かもしれませんが、これが社員を守り、お客さまの信頼を守るものだと私は考えています。健全性を維持する仕組みとして、引き続きしっかり運用していきたいと思います。

守りと攻めの両輪をドライブしてサステナビリティ経営を実現する

(阪本)
SMASではコーポレートガバナンスを重視してきましたが、事業・社会の変化などに合わせ、時代ごとに見直していく必要があります。とりわけ昨今、ESG経営が重視されるようになり、社会的価値や責任が問われる時代になってきました。

(小林)
一部の自動車関連会社の不祥事が相次いでいますが、これを自分事としてガバナンスを強化すると同時に、クルマへの信頼回復や期待醸成に果たす役割を考えていくときだと思います。クルマの価値や使われ方も多様化していますが、SMASもデータ活用やEVなど新たなモビリティサービスの開拓に乗り出しています。

(阪本)
市場の変化をとらえ、新たなビジネスのチャンスをつかみとる――変化の荒波に漕ぎ出していくには、コンプライアンス遵守とリスク管理という手綱をしっかり握っていくことが欠かせません。幸いにして、私たちには堅実な経営基盤と高い技術力、優れた人財という強みがあります。これらを適切に生かせるガバナンスを発揮することで、「サステナブルな社会に向けたモビリティプラットフォーマー」への進化が可能になると思います。

(小林)
さらに私たちの会社は、住友商事と三井住友フィナンシャルグループ、三井住友ファイナンス&リースという株主によって支えられています。それぞれの企業が世界基準でトップレベルのガバナンスを発揮しており、私たちも同等に近い水準が求められます。それが競合他社と比較したとき、業界のリーディングカンパニーとして私たちの強みともなっていますね。

(阪本)
また、当社は有価証券報告書を発行しており、上場企業と同等のガバナンスを目指しています。この高い基準は、SMASの企業価値の向上にもつながっています。
さらに、サステナビリティ推進が加速しており、脱炭素の観点からEV導入に関するご相談が増えています。SMASは、ESG経営の視点からサステナビリティを事業に取り込む組織体制を整え、全社で展開するフェーズに突入しています。サステナビリティ経営は、結果的にコーポレートガバナンスの強化にもつながっていくと思います。

(小林)
ガバナンスをしっかり効かせて、社員全員に意識浸透を図っていくのが、私たちのミッションですね。企業経営で大切なのは、「守り」と「攻め」の両輪のバランス。コンプライアンス遵守やリスク管理は「守り」ですが、企業価値向上という「攻め」に最終的にどうつなげるか――SMAS独自の挑戦を続けたいと思います。