SDGsリースを通じて社会とつながる森林保全の実現へ

2021年度より行なっているSDGsリース『みらい2030®』に賛同いただいたお客さまとともに、一般社団法人モア・トゥリーズ(more trees)の支援をしています。
森林破壊と地球温暖化の危機的状況に憂慮し、地域との協働で森林保全を行う「more treesの森」を展開、「都市と森をつなぐ」をキーワードに「森と人がずっとともに生きる社会」を目指すモア・トゥリーズ。
事務局長の水谷様に活動の現状と展望をうかがいました。

SDGsリースを通じて社会とつながる森林保全の実現へ

一般社団法人モア・トゥリーズ
事務局長 水谷 伸吉 氏

森林破壊を進めてきた人類の責任として「森と人がずっとともに生きる社会」を目指す

私たちモア・トゥリーズ(more trees)は、今年3月に他界した音楽家の坂本龍一が中心となって設立した森林保全を目的とする団体です。もともと坂本はさまざまな社会課題に関心を持っていて、本業のかたわらそれらの課題解決に向けた活動に取り組んでいました。そんな中、世界的に森林破壊が急速に進んでいる状況を憂慮して、2007年にモア・トゥリーズを立ち上げたのです。当時、私はインドネシアで植林をするNPOで活動していましたが、坂本からの誘いを受けて事務局長に就任しました。

私たちは「森と人がずっとともに生きる社会」を目指すことをビジョンに掲げ、「都市と森をつなぐ」さまざまな活動に取り組んでいます。そのメインとなるのが、現在、国内19カ所、海外2カ所で展開している「more treesの森」での保全活動です。

世界では今、1秒間にテニスコート12面分というものすごいスピードで森林が失われています。中でも顕著なのが、赤道周辺の低緯度地域にある熱帯雨林です。

例えば、加工食品や洗剤に使われるパームオイルの生産が盛んなインドネシアのカリマンタン(ボルネオ)島では、プランテーション農園を開墾するために熱帯雨林を伐採して火入れを行いますが、その火が周囲に延焼してしまうことがあります。延焼が引き金となって森林の急速な消失につながるのです。結果、絶滅危惧種のオランウータンやゾウなど多くの野生動物が生息地を奪われて危機的状況に陥っています。この状況にモア・トゥリーズでは、オランウータンの保護活動を行っている現地のBOS財団とともに、森林再生のための植林活動に取り組んでいます。

また、東南アジアでは、日本が1960年代から木材を大量に輸入し始めたことから森林が次々と伐採されました。そのため、フィリピンでは森林が国土面積の20数%にまで減少し、台風などによる大規模な土石流や山崩れなどの災害が多発する原因となっています。私たちはルソン島北部のキリノ州で、地元住民と協力して在来種を植林する森林再生プロジェクトに取り組んでいます。

一方、日本国内でも戦後から高度経済成長期にかけて急増した建築需要に対応するため、国策として各地の山々にスギやヒノキが植えられました。ところが近年、木材価格が下落したことで林業が衰退し、木を伐採した後に苗を植林するコストが捻出できない山林の所有者が続出。毎年約5万haのペースで、はげ山が増え続けています。また、スギとヒノキばかり植えたため、人工林の約7割がこの2種類で占められ、森の多様性が失われたことも大きな問題です。

私たちは、スギやヒノキが伐採された跡地に植林するほか、除材や間伐などの手入れも行っています。植林の際には、スギやヒノキでなく、その地域の気候風土にマッチした広葉樹など、複数の種類を植えるようにしています。

森林再生と地元産業の活性化の両立により将来にわたり持続的な活動が可能になる

私たちが森林保全活動を行う際には、基本的には無償のボランティアではなく、地域の人々に人件費を払って有償で参加していただくようにしています。その理由は、森を育てるという行為は、数十年という単位で継続していかなければならないからです。また、植林も簡単な作業はなく、一定の経験を必要とする重要な仕事です。

私たちの活動は、森の保全だけでなく、地域の雇用創出へのコミットも目的としており、地元の林業で生計を立てているプロの方にお願いをしています。

住友三井オートサービスさんも「SMASの森」で、植林や、除伐、下草狩りなどの森林保全をやられているとお聴きしていますが、ひとりでも多くの社員の方々が重要かつ必要なことだと実感していただけていることは、意味のある活動だと思います。

奈良県の天川村には、キハダというミカン科の木の皮を煎じて作る陀羅尼助丸(だらにすけがん)という、1300年前からこの地域に伝わる丸薬があります。しかし、戦後の植林活動で原料のキハダがスギやヒノキに置き換わってしまい、今ではわざわざ村外から木の皮を買って来なければなりません。そこで、数年前から村の象徴であるキハダを植林して森林を再生する活動を始めました。地元の材料で陀羅尼助丸を作って地元の温泉街で販売する“地産地消”のプロジェクトは、村のアイデンティティーを取り戻すことでもあり、地域の方々だけでなく村外や都市部の企業のバックアップもいただきながら、夢の実現に向けた取り組みが進められています。

このように森林の再生が地元産業の振興につながることで、これらの活動が一過性ではなく、持続的に回っていくようになります。私たちの役割は、その最初の一歩を踏み出す背中を押してあげることで、それにはモア・トゥリーズがSDGsリース『みらい2030®』(寄付型)を通じていただいている皆さまからのご寄付をはじめ、多くの方々からのサポートが大きな力になっています。

そのほかにもモア・トゥリーズでは、森林保全活動につながるさまざまな取り組みを行っています。国内外の森林に関わる課題をより多くの方に知っていただくためのセミナーや講演、シンポジウムなどを、日本各地の高校や大学、企業などで開催しています。また、公共施設や商業施設の一部を会場に、子どもたちが積み木で自由に遊ぶスペースを設置したり、親子で椅子を作る木工のワークショップを開催するなど、木材資源に対する理解を深める活動も行っています。

さらに、国産材を使用したオリジナルグッズの製作も手がけています。私たちが中心となって企画し、デザインは隈研吾(注・6月に代表理事就任)氏のようなデザイナーに依頼し、その地域の木工メーカーや職人さんに加工していただきます。完成した小物や玩具、オブジェなどは、国内外の約50の店舗で販売されています。

私たちは、これからも多様性のある森づくりを通じて、地球環境の保護とともにさまざまな地域課題の解決に取り組んでいきます。世界の森林保全活動をいっそう推進していくためにも、引き続きSDGsリース『みらい2030®』(寄付型)などによるご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

このインタビューは、20236月に行いました。
SDGsリース『みらい2030®』(寄付型)は、三井住友ファイナンス&リース株式会社の登録商標です。
詳細はこちらよりご確認下さい。